海外ユニコーンに関わる市場動向を中心としたマーケットコラム

MARKET COLUMN

2019年9月18日

粗製乱造されるユニコーン

ジェフ・マクドナルド
HiJoJo Partners株式会社
投資助言部 ディレクター
昨今、ユニコーン企業に投資マネーが殺到している
「ユニコーン企業」とは、企業評価額が10億USドルを超える非上場のスタートアップ企業を表す呼称だが、最近では、ビジネスモデルや成長性を適切に評価することなく、名前ばかりがひとり歩きしているようなケースも散見されている。そこで今回は、世界中でシェアオフィス「We Work」を展開し、最近IPO申請を行ったことでも注目されているユニコーン企業「The We Company」(以下webwork)を例に取り上げてみたい。

Print and Protectの結末

WeWorkは、世界中から莫大な投資マネーを集め、有望なユニコーン企業に軒並み投資しているファンドとして世界的に知られる「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(以下ビジョンファンド)の代表的な投資先のひとつでもある。そのため、多くの投資家は、あのビジョンファンドがWeWorkへの投資を継続する限り、WeWorkの企業評価額(バリュエーション)も共に上昇し続けるものと捉えていた。
つまり、WeWorkにまつわる投資環境は、上場株マーケットで言う「Print and Protect」同様の状況にあったといえる。Print and Protectとは、決まった銘柄を継続して追加取得し続ける事で含み益がある状態をキープすることを指す。しかし、マーケット全体の動向や企業の実態を反映せずにただ値を追うこのやり方では、追加の投資の手が止まった途端にそれまでの評価額の維持ができなくなるのである。
実は2018年の段階で、ビジョンファンドの大口出資者であるサウジアラビア政府系ファンド「PIF」とアラブ首長国連邦の政府系ファンド「アブダビ」は、ビジョンファンドによるWeWorkへの追加投資に対し懸念を示していた。しかし、ここのところのメディア報道にあるとおり、Print and Protectの結末が訪れ、PIFやアブダビの懸念が的中した形だ。

WeWork、IPOの行方

上場申請を行うなど、目下IPOに向けた準備が進むWeWorkだが、200億USドル以上と評価し投資した投資家達は眠れぬ夜を過ごしているのではないだろうか。ついにソフトバンクもIPOを延期するよう働きかけたことが報じられている。そして、その企業評価額は最終的に200US億ドルを下回ると言われている。実際、WeWorkに投資しているフィデリティ・インベストメンツが、2019年3月時点で企業評価額を180億USドルと算定していることをBloombergが報じている。
ユニコーン企業という呼称のそもそもの由来は、存在そのものが稀で非常に価値が高く、簡単に入手できないことを表現したものだが、その意味においてWeWorkは果たしてユニコーンと呼ぶにふさわしいと言えるだろうか?

最低限押さえておきたい、スタートアップ企業の評価メトリック

単に企業評価額が10億USドルを超えたというだけ、有名な投資家が投資しているだけで期待を膨らませたるのではなく、WeWorkの事例を教訓にして、スタートアップ企業を見極めるためには、どうあるべきだろうか?
一般的に、スタートアップ企業の評価には様々な計測指標が用いられている。中でもミドル・レートステージでの投資は、事業が確立され、成長を拡大していく時期に当たるため特に重要となる。そこで、代表的な指標をいくつかご紹介しておきたい。(表参照)
代表的なスタートアップ企業評価メトリック
ARPU1ユーザーあたりの平均収益(Average Revenue Per Unitの略)
通信事業やデジタルメディア、ソーシャルメディア等が主に使用する指標値。
Barrier to entry対象ビジネス・市場への参入に必要なコスト(資材、人材等)
CAGR年平均成長率(Compound Annual Growth Rateの略)
複数年にわたる成長率から1年あたりの幾何平均を求めた指標値。
COGS売上原価(Cost of Goods Soldの略)
製品やサービスを生み出すために直接必要とした経費の総称。
EBITDA1年間のキャッシュフローに相当する財務指標。
税引き前利益に現金で支払われない費用(特別損益、支払利息、減価償却費)を加えて算出することで、財務上の判断や税務処理による影響を除いた本業の収益力を評価できる。
EV将来のフリーキャッシュフローを割引いた現在価値を示す指標。(Enterprise Valueの略)
株式の時価総額に、ネット有利子負債(有利子負債から、すぐにキャッシュにできうるであろうものを差し引いた金額)を足しあわせて算出。
Gross Profit粗利益、売上総利益
売上高から売上原価を差し引いた金額のこと。
KPI目標の達成度を測る指標(Key Performance Indicatorsの略)
各社が、個人や部門、事業等を定量評価するために設定される指標。この指標に基づき、達成すべき目標に対する進捗の確認が行われる。
Moat競合他社に勝ち抜く強みを示す用語(本来は堀を意味する)
投資家ウォーレン・バフェットによる造語。
Net Income純利益
すべての収益からすべての費用を差し引き、最終的に会社に残った金額のこと。
Revenue収益・売上
製品やサービスを提供することで発生した売上高のこと。
TAM製品やサービスによって理論上実現しうる収益機会の最大値、市場規模(Total Addressable Marketの略)
Valuation企業価値評価額を指す用語。企業価値評価プロセス自体を指す場合もある。
出所:HiJoJo Partners作成

本来のユニコーン

「ユニコーン企業」という呼称は、本来こういった指標等による評価に耐えうるスタートアップ企業に対してのみ用いられるべきではないだろうか。

そして、企業の企業評価額だけではなく、様々なメトリックを考慮した上で、企業の将来性が評価されるべきである。

(Geoff Macdonald)
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